20230621 UAV Sea Guardian MQ9B 001

The SeaGuardian, a large unmanned aerial vehicle that the Maritime Self-Defense Force been testing, June 21, 2023, at the JMSDF Hachinohe Air Base. (© Sankei by Toyoda Ichioka)

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海上自衛隊が試験運用を始めた大型無人航空機「シーガーディアン」(MQ9B)が6月21日、初めて公開され、青森県八戸市の八戸航空基地へ向かった。中国やロシアが艦艇の活動を活発化させる中、防衛省は従来の哨戒機による警戒監視任務を無人機で代替可能か検証中だ。基地では無人機を操るオペレーション室に初めて記者が入った。戦闘のあり方を変える「ゲームチェンジャー」とされる無人機の舞台裏をのぞいた。

 

SeaGuardian
初めて報道公開されたオペレーション室で大型無人機「シーガーディアン」のデモ映像を確認する海上自衛隊員=6月21日、海自八戸航空基地(市岡豊大撮影)

 

カチ、カチ、カチ…。

 

八戸航空基地の一角、格納庫内の一室でオペレーターの外国人女性がモニター画面に向かってマウスを動かしている。見学時、室内の様子は撮影が禁止された。画面に映し出された三陸沖の地図上の無人機を示すマークが少しずつ移動している。レーダーの範囲を示す扇形の中に入った青い三角形の印をクリックすると、別のモニター画面に海上を進む貨物船が映った。

 

その鮮明さに驚いた。船の甲板の端に手すりが付いている様子や、船の後ろになびく白波までくっきりと分かる。後部に「TOKYO」と書かれた船籍港の文字も判別できる。映像は無人機から15キロ以上先の船のものだという。

 

「富士山の頂上から山麓を走る車の車種が分かるくらいは見えます」

 

詳細は明かせないとしつつも、海自隊員はこう例えて説明してくれた。その後も女性は、区分けされた別室で無人機を操作する操縦士らと無線で話しながら、モニターの画面を周辺の船に次々と切り替えていった。

 

英語で「海の守護神」を意味するシーガーディアンは米ジェネラル・アトミクス社製で全長11・8メートル、幅24メートル。航続距離はフィリピンまで届く約4300キロ、航続時間は24時間に及ぶ。レーダーで船影を捉え、360度撮影可能な高性能カメラと赤外線カメラで目標物の映像をオペレーション室に伝送する。

 

初めて報道公開されたオペレーション室で大型無人機「シーガーディアン」の操縦席を紹介する海上自衛隊員=6月21日、海自八戸航空基地(市岡豊大撮影)

 

この日は三陸沖での約8時間にわたる監視任務の一部を見せてもらった。

 

警戒監視は哨戒機による監視員の「人の目」が大きな役割を果たしてきた。目視でも10~20キロ先の船を見つけることはできる。だが、不審な点を確認するために高度1千メートルから150~300メートルへの接近降下を繰り返さなければならない。シーガーディアンならばクリック一つだ。

 

哨戒機は潜水艦を見つけられる対潜能力がある。ただ、それすら将来的には人工知能(AI)を搭載した無人機が代替する可能性もある。

 

「ついにここまで来たかと思った」。哨戒機パイロット出身の基地幹部は初めてシーガーディアンを見たときの衝撃をこう話す。

 

現在は契約先企業の所有機を使用し、米国企業が運用を行う。海自は来年9月までに計2千時間の試験飛行を行い、どこまで哨戒機の任務を代替できるかを見極めるという。

 

「それでも必要な場面で有人機が出動するのは脅威への対抗という国家の意思を示す意味がある」と基地幹部は続ける。無人機担当部隊のマークには相手をにらむような目が特徴の鳥「ハシビロコウ」があしらわれている。「機械の目」と「人の目」を使いこなして中露艦艇に「にらみ」を利かせてもらいたい。

 

筆者:市岡豊大(産経新聞)

 

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